埠頭にたたずむ女

何か訳ありげに涙を流す

風にたなびく黒髪が彼女を謎めいた存在に変える。

"何故泣いているんだい?"

その一言が言えない僕は遠くで見守るしか出来ない。

「もう一度…せめてもう一度だけ…会いたい」

彼女は、静かにそう呟いたかと思うや、くるっと身を翻しコートの襟を立て春霞の中へ消えていった。