プレシャス・ムーン

「……」

 何……このお約束のシチュエーション。

「!?」

 ミカは瞬間、恐怖よりも別の事が頭に過ぎった。

 ここで彼が助けに来てくれるというのは理想のシーンだが……ざっと数えて10人ほどの数に、さすがに無理だと体を震わせる。

 ニヤけた顔をしながら1人の男がミカに近寄ってきた。

「怖くて声が出ないのかな~?」

 いかにも軽そうな男。ガムを噛みながら軽薄に口の端をつり上げている。

「う……あのっ」

 ミカは必死に声を絞り出す。

 その姿に、男たちはさらに嬉しそうにじりじりと間を詰めてきた。