プレシャス・ムーン

「!」

 教授とすれ違う。ミッシング・ジェムの事を、話してくれた教授だ。

「教授!」

 ミカは無意識に教授を呼び止めた。

「? なんだね?」

「あの、以前……ミッシング・ジェムの事を話してくださいましたよね」

「ああ……あれか」

 教授は思い出したような声を出した後「あれは、あくまで単語だけが語り継がれている。というだけのものだよ。実際に存在したら、人類の歴史はとんでもない事になる」

 ミカはそれに目を伏せて質問を投げかけてみた。

「教授自身はその存在を、どうお思いですか?」

「……」

 問いかけられた教授は、とても驚いた顔をして当惑した。数秒、考えたあとにつぶやくような声で口を開く。

「確かに、人類の歴史には存在すべきものではないが……」

 教授は数秒、沈黙して視線を外したあと「私は『いて欲しい』。と願うよ」とつぶやいた。

「ありがとうございます」

 そんな教授の言葉に、ミカは笑顔でおじきをした。