プレシャス・ムーン

「私が怖くないのかね?」

 その質問に、ミカは視線を落として小さく答えた。

「怖かった……でも、助けてくれた」

 ベリルはそれに苦笑いを返した。

「私に会うためにここに来たのなら。私の責任だからな」

 そう言って目を細める。

 闘っていた彼を凄く怖いと思ったけど、今は全然そんな気持ちは無かった。とても落ち着いた、よく通る声。

「ベリルさん……は、ずっと旅してるの?」

「ベリルでいい」

 言って、うずくまる男たちを一瞥(いちべつ)。

「……」

 この場所で会話するのもどうかとベリルは歩き出した。

 落ち着いた処まで来て、星空を仰ぐ。ミカもその横で天を見上げた。

「旅をするのは趣味のようなものだ。私は傭兵でね」