プレシャス・ムーン

「邪魔したな」

 ベリルは、そう言ってどこかに行こうとした。

「! ちょっ……待ってよ」

 呼び止めたミカに振り返り、「まだ何か用か」と怪訝な表情で問いかける。

「えー……と」

 用という用は無いんだけども……いや、無い訳じゃない。

「日本語、上手いのね」

 待て……そんな事が言いたい訳じゃない。

 ミカは必死に考えてとりあえず当惑気味にひと言、発した。

「助けてくれてありがとう」

 とにかく、彼をこのまま見失う訳にはいかない。