プレシャス・ムーン

「ミッシング・ジェムには多くの種類がある。私はその1種に属する」

「どうして……こんな処にいるの?」

「旅をするのが好きでね。ここに来たのは偶然だよ」

 言って肩をすくめる。月が美しくて眺めていたんだとか。

 そういえば、今日は満月だ。

「……」

 ミカは夜空に輝く月を見上げた。いつもより大きく見える。

「月は不思議なものだ。場所によってこれほど色を変える」

「色……?」

 雰囲気の事かしら。首をかしげてベリルに顔を向けた。

「!」

 月を見上げる彼の横顔に、ミカは心臓が高鳴った。

 月明かりに短い金髪が輝き、エメラルドのような瞳は本当の宝石みたいに見えた。