プレシャス・ムーン

 言われて、残った男たちはカッとなる。

「ぶっ殺してやる!」

 一斉に、ナイフやチェーンを振り回した。

 ベリルは、難なくそれを避けていく。そして、呆れたように小さく溜息を吐き出す。

「チェーンの使い方がなっとらん」

 彼は薄笑いを浮かべて、ぼそりと言った。

「……」

 ミカは、そんな光景を視界全体で眺めながら教授の言葉を反芻していた。

「人類の歴史の中に埋もれた……希少価値の存在」

「よく知ってるじゃないか」
「!」

 そんな言葉でハッとする。

「誰も知らんと思ってつい喋ってしまったのだが」

 ベリルは流ちょうな日本語で応えた。