-10年前-




トウシューズの紐をキツく締めあげながら出番を待つ。




ふわっと鼻を鈴蘭の香りが過る。

(さっきの男の子…無事にお母さんの所に戻れたかなぁ)




私は頭の中から男の子の吸い込まれそうな瞳を追い出せずにいた。




「冷っ!?」
ふと、冷たいものが額に押し当てられた。