生きる

稔が荷物の整理をしていると、部屋に来た後輩の林田が話し掛けてきた。
「安形さん。球団から出ていくんですか?」
途中、手が止まった。
本当に出ていかなくてはならないのか。
これからの自分の人生は、どうなってしまうのか。
稔は黙って頷いた。
ため息を吐き、林田は言った。
「はぁ。安形さんみたいな人が、辞めるなんて。信じられないですよ。打者転向をしてみたらどうですか。」
打者転向という言葉に、稔は少し戸惑った。
打者に転向すれば、まだ球団に置いてもらえる。
けど、自分は打者の才能があるのか。
「いや、俺はエースでいたいんだ。」
元エースのプライドが邪魔をする。
そうですかと言って、林田はため息を吐きながら部屋を出ていった。
ため息を吐きたいのは、稔も同じであった。