チャリパイ12 ~資産家令嬢殺人事件~


その血文字を見て、
シチローは思い出したように岡崎に尋ねた。


「『ババ』という名の
人間は、確か招待客の中に居ましたね?」


「ええ……馬場建設の
馬場 芳郎社長です!」



「それだわっ!」



岡崎の答えを聞くやいなや、子豚は部屋を飛び出して、階段の方へと走り出した。


「あっ!」


そして、それを見た松田も慌ててその後を追う。


ダダダダダダ!



廊下を勢い良く走っていった子豚と松田は、下のパーティー会場が見渡せる階段の踊り場で立ち止まると、真っ直ぐ伸ばした右手の人差し指を招待客の馬場の方へ向け、揃って決め台詞を吐く。



「犯人は、馬場さん!
アナタです!」



「ちょっと!マネしないでよ!主役は私よ!」


「いや!これは警察の仕事だ!探偵はひっこんでろ!」


「何言ってんのよ!犯人を名指しするのは探偵の一番の見せ場なのよ!
警察は後、後!」


「なにを!おいしい所だけ持ってこうったって、そうはいかね~ぞ!」


この事件の主導権を巡って、互いに譲らない子豚と松田。


当の馬場は、そんな二人を呆気にとられた顔で見ていた。