稔太に引っ張られて着いた場所は、

体育館の入り口。

宿舎とは少し離れていて、人の気配はあまりしなかった。


稔太はあたしの手を離すと、段差に腰を下ろした。


「何してんだよ? 早く愛花も座れよ」

「あっ、うん…」


ちょっと控えめに、稔太の隣に座った。

微かに触れる肩から、稔太の体温が伝わってくる。


座ったのはいいけれど、何も会話がなかった。

稔太は、あたしと逆の方を向いてるから、表情までは分からなくて。

手持ち無沙汰に、指をいじって遊んでた。


「あのさー」


その時、稔太の声がした。

その声に反応して稔太を見ると、

視線がバッチリと合ってしまい、少し恥ずかしくなった。