「まだ憶測の域ですが…五大国全てにあの奇妙な私印が渡っているようですねー。使者だかなんだか知りませんが…実に興味深い。」


すっと羊皮紙に目を通す老婆の肩に触れるやヴェクトルは老婆の耳元でくつくつと笑いを洩らす。老婆は疎ましそうに眉を潜めるが羊皮紙からは視線を外さなかった。



「白銀の摂理の愛子達、蠢く痛みは我よりの祝福とせん。…哀れな愛子達は砕け散る前にもう一つの母体を宿し者になるや、愛すべきこの地の主になるべし……………一体何のことやら…ねぇ、陛下…。」


ヴェクトルは目を細めながら羊皮紙の内容を読み上げるが、陛下と呼ばれる老婆はピクリともせずに染みだらけの指先を忙しなく震わせていた。






…何故……今となってこの時期に……。






見開いた瞳は焦点がもはや合っていないのか、虚ろな色を宿していた。そしてそれに追い打ちをかけるようにヴェクトルは老婆の耳元で口を開く。













「とにかく…

















――――――貴方の蠢くあれは外に出てしまうようですね…。」