思い出に変わるまで【完】

その日いつも通り出勤すると、新人さんが入っていた。


「葉月ちゃん、色々教えてあげてね」


そう、店長に紹介された彼。



「成海です……。よろしくお願いします」


「あ……。ハイ……」


短い黒髪の彼は、微笑むことなく無表情で軽くお辞儀した。



「この子は葉月ちゃんね。名字が田中で僕と一緒だから……。ややこしくて下の名前で呼んでるんだよ」


そうやって笑う店長につられて、


「葉月です……」


と私も軽くお辞儀をした。