ふたり




「……頑張って、治療してたのにさ

弟の身体は副作用に耐えられなくて

医者があと3ヶ月ですって

………信じられなくて

なんとか、なんとか治療してくれって親も……泣いて

余命はもちろん弟には言わなかったけど

医者に余命宣告されたあたりから

弟が急に『家に帰りたい』って言い始めたんだ

オレはきっと治るからって頑張ってくれよって言った

弟はもう充分、頑張ったのに

家に帰りたいって言ったのに

結局、3ヶ月持たずに
弟は亡くなったよ

もう目覚めない姿で家に帰って来て

いつまでも『家に帰りたい』って弟の声が耳に残ってさ」



高野先生はギュッと灰皿にタバコを押し付けて



「オレは弟が治るって最期まで信じてた

それは間違ってないと思ってる

だけど、今でも弟の『帰りたい』って声は耳に残ってる

なにが正しいかなんて
答えは出ないよ、柊。

でも、……生きるって、ただ呼吸する事だけじゃねぇだろ

ましてや長さでもないし

自分がどうしたいか
選べる事も生きるって事じゃねぇのかな?」