優が通う県立 如月高校は偏差値が五十一で、これといった特色がない公立高校だった。

敢えて特徴を挙げるとするならば、全生徒数の約三分の二が女生徒であるという事だろう。

男子生徒の中には、その女子生徒の割合の多さに惹かれて、多少高校のレベルを落としてでも、如月高を受験する輩もいるぐらいだ。

優に関してはそんな不純な理由ではなく、滑り止めとして受けた高校だった。

そして本命の高校に見事に滑り、合格していた如月高の入学に至った。




「…で、天正十年の六月二日、明智 光秀を首謀者とされる本能寺の変が起こった」

今は日本史の授業中である。

何故かこの日本史の授業になると、女生徒の多くが目を輝かせて授業を受けている。

その理由は日本史の担当である教師 斉藤 将人の外見に起因するのだろう。

眉目秀麗な容姿は、異性は勿論のこと、同姓でさえ一瞬見とれてしまう程のもので、女生徒達が熱をあげるのは仕方のないことだった。

「六月一日 信長に閲兵してもらう為に丹波亀山城を出陣した筈の光秀だったが、翌日の二日に桂川を越えた時にある有名な言葉を叫ぶと軍の進路を変えた」