クラスメートである山下 誠二だった。

彼は柔道部に所属しており、県大会で優勝する程の実力者だった。
クラスのムードメーカー的存在でもある。

「相変わらず、朝からシケた面してんな、佐々木は」

優の横までやって来ると、自転車を並走させながら話しかけてきた。

「そ…そうかな?僕は至って普通なんだけど…」

優は気弱そうに答えると、愛想笑いを浮かべた。

「だから、その普通がシケてるんだよ」

ズバズバと物を言う誠二に気圧された様に、優は再び愛想笑いを浮かべる。

「それよりさ、昨日の夜、アレ見た?」

誠二はそんな優を気にするでもなく、有名なバラエティ番組の名前を出してきた。

「え?ああ、見たよ。やっぱり面白いよねぇ、彼奴ら」

誠二のマイペースさに戸惑いながらも、その番組自体あまり見た事はなかったのだが、優は話を合わせた。

歯に衣を着せぬ言い方をするタイプの人間を元々苦手としていた優は、当然誠二もその範疇に入っていた。

嫌いという感情ではないのだが、何故か気後れしてしまう。