辺りは既に薄暗くなったおり、景色同様の暗い気分で校門を出ると、まるでタイミングを見計らったように前方から自転車に乗った空也が笑顔で近付いてきた。

軽く手を挙げて挨拶すると、当たり前のように優の横に付けてくると、気さくに喋りかけてきた。

空也とはまだ付き合いは短いものの、同じ覚醒者で、唯一自分の置かれた状況を理解してくれている人間なので優は心を完全に開いていた。

それでも先程の教室での出来事はあまり人に言えるような話ではないのだが、「何かあったんでしょ?」の空也の一言で不安で押し潰されそうだった優は、堰を切ったかのような勢いで喋りだした。



「だって、殺しちゃえばバレることはないじゃん」

「そ、そんな事出来るわけないし、山本さんもいるし、二人も殺せるわけないし、人を殺せるわけがない」

優は何故か焦ったようにしどろもどろになりながら、空也の言葉を否定し続ける。

空也の目を見ていると一種の催眠にかかったかのような感覚に陥り、その言葉を受け入れてしまいそうになるのが怖かった。

それを必死に打ち消す為に優は喋り続けた。