「優君、それヤバいよ」

ジッと優の顔を見据え、空也は真顔で言う。

「ヤバいって…何が?」

優は不安そうな表情で、自転車を並んで走らせている空也の顔を窺う。

「尾崎さんが」

「…尾崎さん?」

まるで解らないと言わんばかりに優は首を傾げる。

「言い触らされたらどうするの?」

「それは……困る」

「だったら何とかしなきゃ」

柔らかい笑顔のまま喋る空也の顔を困ったような表情で優は見返す。

「何も出来ないじゃん。もう見られたんだし…」

「だったら喋らせないようにしたらいいんだよ」

「どうやって?」

優のその言葉と共に空也の瞳に妖しい光が灯る。いや、灯ったように優には見えた。

一呼吸おいて、空也はニヤリと口角を吊り上げる。

普段の爽やかな笑顔からは想像がつかないほどの不気味な笑い方だった。

「殺しちゃえばいいじゃん」

軽い口調でそんな言葉を吐く空也にゾッとする。

「そ、そんなこと…」

空也の得も言えぬ迫力に押されたように、優は言葉を詰まらせた。



涼子が出て行った後の教室で暫く呆然としていた優だったが、我に返ると重たい足を引き摺って帰りの途についた。