学園祭の準備も順調に進んで、当日まであと一週間というこの時期に展示物の80パーセント以上は出来上がっていた。

涼子の決めた適材適所が功を奏したのか、皆が与えられた仕事を淡々とこなし、時間的有余を持ってほぼ完成に近付いている。

「もうちょっとで完成だね」

優は作業の手は休めず、隣りで何やら書き物をしている涼子に向かって軽い口調で話しかけた。

「そうだね。みんなの頑張りのお陰だよ」

そんな社交辞令的な言葉も、涼子が言うと何故か嘘臭く聞こえない。おそらく彼女の本心から出てる言葉なのだろう。

「それもあるけど……僕は山本さんの力も大きいと思うよ」

遠慮がちにではあるが、言葉には力を込めて話す優の顔は真剣そのものだった。

優のそんな表情を見て頬を緩ませた涼子は小さく「ありがとう」と言うと、また作業に没頭し始めた。

カリカリ、ザクザクと、お互いの作業の音だけが教室に響いた。

今、他の生徒は皆出払っていて、教室には優と涼子二人だけだ。

開け放たれた教室の窓からは、残暑の厳しさを現す様な生温い風が入り込んで来て、パタパタとカーテンをはためかせている。