今日は学校帰りに二人で、高校の近くにある多加鴨神社にやって来ていた。

学園祭で地域の伝承を調べる役を担っている由姫達が、転校してきたばかりの空也を強引にその役に引き摺り込んだのだ。

由姫の取り巻き二人もその役を担っている筈だが、何か用事があるとかで先に二人共帰宅してしまっていた。

と言うよりは、由姫が無理矢理帰宅させたと言った方が正しいだろう。

階段を登りきると拝殿までの間を石畳が敷かれており、右手には手水舎が置かれている。

拝殿までは30メートルほどの距離で、神社としてはさほど大きくはない。

空也はその境内の景色をぐるりと見渡すと、おもむろに拝殿へと続く石畳をスタスタと歩きだした。

相変わらず仏頂面の由姫も仕方なくその後を追う。

拝殿の左手にある社務所らしき建物には御守りなどを販売している受付があったが、その窓ガラスの向こう側には誰もいなかった。

空也は拝殿まで辿り着くと、賽銭箱の上に取り付けられた本坪鈴や鈴緒を何故か不思議そうに眺めている。

「どうしたの、前田君?」

物珍しそうに鈴を見上げている空也に由姫は訝しげに尋ねた。