廊下を行き交う女子は勿論のこと、際立った端正な顔立ちは男子達にも好奇の目を向けられている。

「ちょっと待っててもらえるかな。直ぐにご飯食べちゃうから」

学食に着いて、数ヶ所しか空いていない席を確保すると空也は早速メニューを物色しに向かった。

優は一人で席に座り、食券を買っている空也の後ろ姿を凝視していた。と同時に意識を彼の胸元辺りに集中させる。

(どんな人なんだろう?)

空也の心の中を覗くべく、更に意識を集中させる。頭の中に彼の心の中の言葉が聞こえてくる。

……筈だった。

だが、どんなに精神を集中させても言葉が入って来ない。何度試みても何かに阻まれる様に心の中の言葉は聞こえてこなかった。

既に空也は食事をトレイに乗せてこちらに向かって来ている。

(……何故?)

空也が優の目の前に座る。彼は優にジッと目を据えると、口の端を軽く吊り上げるとこう呟いた。

「覗けないよ」

真っ直ぐに見据えてくる空也から優は視線を逸らすことが出来ず、ゴクリと喉を鳴らす。

「僕の心は覗けないよ、優君」

優の強張った表情を見て、いつもの笑顔に戻すとゆっくりとはっきりとそう言った。