昼休みになると空也の席の周りには女子限定の人だかりができていた。

姦しく騒ぎ立てるその集団を男子達は嫉妬と多少の羨望を込めて眺めている。

前の席の優はその集団に押される様に窮屈な体勢で弁当を掻き込んでいた。

「僕に構ってくれるのは嬉しいけど、佐々木君が窮屈そうだ。だから悪いけど自分の席に戻ってくれるかな」

そんな様子を見て、空也が皆を諭すように声をかけている。

「前田君、やさしい~」

「佐々木なんかほっといていいよ、前田君」

空也の言葉にも女生徒達は全く意に介する様子はなく、相変わらず喧しく周りで騒いでいる。

それを気にするでもなく、優はひたすら弁当を食べ続け、それを食べ終えるとそそくさと教室を出て行こうとした。

「佐々木君、学校案内してよ」

未だ女生徒に囲まれている空也は目で優を追いながら、突然大声で彼を呼び止めた。

その声に驚いた様に周りにいる女生徒達の話し声がピタリと止んだ。

彼はスッと立ち上がると優しく人垣を押し退けると、出入口付近にいる優の所まで足早に近付いて行く。