相手の性格や部活動の状況を考慮した上での人選である事は、先程その紙を見た時に優でさえも直ぐに理解出来た。

にも関わらず、相手が難色を示すのは、間違いなく優の力量不足だろう。

どちらかと言えば口下手である優が相手だと断わりやすいのか、様々な理由をつけては素直に従わなかった。

「こんな事出来るの尾崎さんしかいないのよ。人当たりが良いし、誰にでも好かれる貴女だからこそ出来る仕事なんだから」

本音とは思えない事をサラリと涼子は口にした。

尾崎 由姫は確かに外見は異性の目を惹く様な容姿をしていたが、性格はとてもだが良いとは言い難い。

短気で、我が儘。気に入らない事があれば直ぐに怒るか、不貞腐れる。傍若無人と言う言葉がぴったりな性格だった。

斉藤の様なルックスの良い男には猫撫で声で擦り寄るくせに、それ以外の男には話し掛けられるだけで嫌な顔をする。

そんな態度をとる由姫は、極端なほど同性に嫌われていた。

「まあ、そうでしょうね」

机の縁に腰掛けながら、上目遣いで涼子を見上げる顔は満足気だった。

「だから、お願い」