「……めて…くれ…え」
「大丈夫っ!優君!」
母親が明らかにうなされている息子を起こそうと、大声で呼び掛けている。
ベッドの上で寝ている息子は、パジャマをはだけさせながら顕になっている胸元付近を掻きむしっている。
「ねえ、優君ってば…」
体をグッショリと寝汗で濡らして、未だにうなされている息子が心配で、肩を揺さぶろうと手を近付けた時、
「止めてくれえぇぇっ!!」
と叫びながら、上半身を凄い勢いで跳ね起こしてきた。
「きゃあ」
母親である佳子は、寸でのところで頭の衝突は避けれたものの、かなり慌てての回避行動だったので、バランスを崩してしまい尻餅をついた。
そんな佳子の様子などには全く気付く様子もなく、優はベッドの上で荒い息を繰り返していた。
「イタタ…大丈夫、優君?」
腰を擦り、立ち上がりながら優を気遣う佳子。
聞こえているのか、いないのかは判らないが、その言葉に優は全く反応せず、荒い息を吐き続けている。
やや下向き加減で、一点を呆然と見詰める優の側のベッドの縁に、佳子はそっと腰掛けた。
「怖い夢でも見たの?」