如月高校の学園祭はクラスごとにテーマに沿った出し物を決め、展示を行ったり、模擬店を出したりとごく普通のものだ。

優のクラスは昨日の話し合いにより、教室を使っての展示に決まっていた。

今回の学園祭のテーマは“我が故郷”ということで、優のクラスはこの地域に纏わる伝説や伝承を取り上げることにしたのだ。

とは言っても、場を仕切っていたのはほとんどが涼子で、優はあたふたするばかりだったのだが…

「じゃ、悪いけどこの情報収集頼めるかな、尾崎さん?」

ぼそぼそと遠慮がちに言う優に、由姫はあからさまに嫌な顔をしている。

昨日決まった展示の内容に沿って、放課後に学園祭の準備を進めているところだ。

クラスの委員を任せられた優が皆に役割を振り分けているのだが、彼の押しの弱さでは話が一向に進まなかった。

誰がどの役割をするのかは、昨日の夜、涼子が考えたらしい案を紙に書いて持ってきてくれていた。

涼子らしいキッチリした文字で書かれたそれは、正に適材適所という言葉が相応しい人選だった。