「優君、帰って来てるの?」
一人悶々としている優の思考を中断させる様に、佳子が階下から突然喋りかけてきたが、それに返事をする程の余力は残っていなかった。
暫く呼んでも返事がないので、パタパタと軽い音をたてて階段を上がったくるのが、優の耳に入ってくる。
「優君、帰ってるんでしょ?返事くらいしなさい」
トントンと軽くノックをしながら、若干苛つきを含んだ声が聞こえてくる。
『何してるのよ、この子は?』
頭の中に入り込んで来る思念に眉をしかめながらも、優は微動だにしなかった。
と言うよりも、出来なかった。心身共に疲れ、言葉を発する事や体を動かすほどの体力が全くなかったのだ。
「ねえ、大丈夫!? 何かあったの?」
全く反応のない優に、佳子のそれが苛つきから不安な声音に変わり始めた時、優は漸く口を開いた。
「…大丈夫。一人にしといて」
絞り出す様に吐き出された言葉は、掠れて聞き取りにくかった。
「何? 何て言ったの? 大丈夫なの?」
優のいつもと違う様子に佳子は不安を隠しきれず、矢継ぎ早に聞き返す。
『何? 何があったの?』

