建前と本音とはよく言ったもので、顔で笑い、心で毒づく、そんな人間の本性を垣間見た一日だった。

何故こんな能力が自分に身に着いたのか、或いは元々持っていた能力だとしたら、何故今になって発現したのかなど色々考えてはみたが、全く思い当たる節がなかった。

関係があるのだとすれば、あの夢以外には考えれないのだが、では何故あんな夢を見たのかと、頭の中では判りもしない事を延々と考えていた。

しかし、今日判ったことも多少はあった。

他人の思念が、誰彼構わず入ってくるという訳ではないようだ。

優の頭の中に声が響いてくるのは、誰かが優に対して思念を発した時か、優自身が他人の心を覗こうとした時以外は聞こえてこなかった。

そうでなければ人込みに紛れた時など、常に声が聞こえてこないとおかしいからだ。

学校という多数の人間が共存している環境であっても、常に声が聞こえている訳ではなかった。

だが、今日一日で解ったのはそれぐらいだった。

それを理解したとて、優の不安から来る恐怖心が和らぐことは一向になかった。