優は家に帰って来るなり、挨拶することすら忘れて、自分の部屋へと直行した。

制服に皺が出来てしまうことも厭わず、そのままの格好でベッドに向かってダイブする。

優にとっては、それくらい疲れた一日だった。

朝の柳沢の一件から始まった今日は、とても平常心を保てる様なものではなかった。

ゴロンと寝返りをうち、ベッドの上で大の字になって、暫くジッと天井を見詰めていると得も言われぬ不安に駆られ始めた。

(どうなっちゃうんだよ、僕は?)

授業を其方退けで、今日一日学校でずっと考えていた事だったが、学校の喧騒のお陰で不安や恐怖心は多少紛れていた。

しかし、いざ一人きりになってみると、その感情が大きく膨らんで、優を攻めたててきた。

漫画やドラマなどの作り物の世界の中では、よくある話なのだが、実際にそれが自分の身に降り懸かってみると、災い以外の何者でもない。

(他人の心の声なんて聞きたくもないっ!)

それが今日一日、他人の心と向き合った優の正直な感想だった。