「帰宅部の奴にやらせたらいいじゃん」

少し困った様な顔をしている正木に松下が素早く提案した。これ以上、自分に火の粉が降り懸からないように先手を打ったのだ。

「う~ん、そうだなぁ」

正木はそう言いながら、生徒一人一人の顔を確認しつつ、教室中を見渡した。

皆は正木と目が合うと、“我関せず”と言わんばかりに下を向いた。

そんな中で優だけは、一人微動だにしなかった。

と言うよりも、“心ここにあらず”といった感じで、机の一点をただ呆然と見詰めているだけだった。

正木の視線が窓際の席の優で止まった。

「佐々木、お前帰宅部だったよな?」

皆の視線が一斉に優に集まったが、彼はその声にも反応することなく呆然としている。

あまりの固まり具合に、皆がクスクス笑いだしても、一向に気付く気配はなかった。

「佐々木! 聞いてるか!?」

やや厳つめの顔をしている正木が、凄味を効かせて喋ると、その迫力に気圧された様に皆がシーンとなった。

「えっ!? はいっ!」

突然、名指しでキツめに呼ばれた優は慌てて立ち上がる。