そんな優の慌てた様子を見て、不思議そうな顔をしている。

「いや、何も言ってないよ」

「え…でも…」

そう言い籠る優を見て、柳沢は訝しむ様子を更に強めた。

「何か変だよ、今日。大丈夫?」

柳沢は心配そうな表情をして、優を見詰めている。

「…うん。大丈夫だよ」

優はそんな彼を安心させる様に精一杯の笑顔を作ってみせた。

『ま、変なのはいっつもか』

また、声が響いてきた。今度は聞き違いが有り得ないくらいのハッキリした声で。

柳沢の顔をしっかり見ていた優は、彼が口を動かしていないのを確認している。

優は驚きのあまり、目を大きく見開いたまま、何も喋ることが出来ない。

「…本当に大丈夫?」

そんな固まったままの優の顔を、柳沢は複雑な表情で上目遣いで尋ねてくる。

『頭がイカれたか?』

何も答えることが出来ない優の頭の中に、再度声が入り込んでくる。

(何だよ、これは?)

呆然とした面持ちで自転車を漕ぎ続ける優を見て、柳沢は諦めたのか、それ以上話しかけてこなかった。