気怠そうに大きく伸びをしているその声の主は、綺麗な顔に似合わない大欠伸をしている。

先程の斉藤の授業中、ほとんど彼女は寝ていた。机に上半身を預けていた為、彼女の右の頬が赤く変色している。

そんな彼女なのだが、不真面目な訳ではない。寧ろ、優等生の部類に属するだろう。

日本史以外は真面目に授業を受けているし、テストの成績も常に上位に入っている。

しかし、どんな理由があるのかは判らないが、何故か男女共に人気のある斉藤の日本史の授業だけは必ず寝ている。

日本史が嫌いというよりは、斉藤に向けられた悪意の様に思える。

その証拠に日本史のテストの点数も、かなり高い点数を誇っている。

何度か斉藤がその授業態度を注意しているのだが、一向に直る気配はない。と言うよりも、直す気配がない。

そんな彼女、山本 涼子の横顔を優はチラリと盗み見ると、いそいそと弁当箱を取り出す為に鞄を机の上に置いた。