ーー覚醒せよ…

深い深い闇の中で声が響く。

ーー覚醒せよ…

辺りに一切の光源はなかった。正に真の闇だ。

その中に感情を全く感じさせない、抑揚のない声が響いている。

ーー覚醒せよ…

淡々と同じ間隔で声が聞こえてくる。その声は耳に入ってくると言うよりは、脳に直接入ってくるという感覚だった。

男とも女ともとれない、低い様でいて、高い様でもある何とも表現しがたい声音だった。

(誰?何処…ここは?)

その問いに答えるでもなく、相変わらず声は何の感情をも感じさせない。

ーー覚醒せよ…

単調で不気味な声に苛立ちを感じ、耳を塞ごうと手を動かそうと試みるが、肝心の手が何処にあるのか解らない。

手だけでなく、剰え体の感覚すら感じ取れない。

魂だけになってしまった様な感覚だ。というよりも、思念体という感じだろうか。

ーー覚醒せよ…

(覚醒って……どういう事?)

何も出来ない、何も感じ取れないこの状況に苛立ちが徐々に募ってくる。

ーー覚醒せよ…

そんな思いを更に助長させる様に、声の間隔が先程よりも短くなってきている。

(……うるさい)