相沢くんが私の横を走る。




「おはよ、藤沢」

「お、おはよ」




変わらない。いつもの相沢くんだ。




「並んで一緒に走るのは初めてだな」

「うん」



出会った頃のことを思い出した。
私の自転車が壊れて初めて遅刻をした日から全てが始まったんだ。




「…幸村に泣かされてない?」

「え、!?」

「泣かさねぇよ」




すぐ後ろから叶くんが言い放つ。


そして、叶くんも私の隣を走りだし、私を挟んで2人の舌戦が始まった。



くだらなく愛しい気持ちに笑みがこぼれる。




「五月蝿いわね!! 亜希が一番好きなのは私なの!! ね?」




私は笑みを返した。
私の手を引いて前を走る早紀ちゃんは、そう言って、更に手を引き、2人の間から私を早紀ちゃんの横に引っ張り出した。




授業中、こんなことが何度もあってはいけないけれど、


先生、今日だけ見逃して下さい…!!!






私たちは上履きで校庭を賑やかに駆け抜けた。