それは初恋で、





「今すぐ100を0にしろってわけじゃない」

「…」

「ゆっくりでいい。俺に立ち止まらずに進んでって」




早紀ちゃんは首を横に振る。




「ゆっくり過去にしていけばいい」

「過去に…?」

「そう。俺もこんな可愛い子に好きになってもらえたって自慢の思い出にするよ」




早紀ちゃんは湊介さんの腕の中から一歩出た。
湊介さんは早紀ちゃんにそっと耳打ちをした。




「俺に言わせりゃまだガキだけど、幸も春樹もいる。アイツら、アレで良い男になるよ。俺が保証する」

「…叶も相沢も亜希にぞっこんだし」

「あぁ…そう、なの?」




早紀ちゃんは一人歩き出し、立ち止まって振り返る。




「湊介さん! 大好きでした…!!」




過去形…




「…コレでいい?」

「…、上出来」





湊介さんは早紀ちゃんに笑顔で返した。

早紀ちゃんの、笑顔の奥の涙が隠し切れていないのを、私も湊介さんも知っていたけれど、早紀ちゃんの強がりが、私にはかっこいいと思えた。湊介さんにはどんな風に映っていたのかな…