「わかんない…」
「あら…」
お母さんはキッチンに戻ってお茶を入れた。
「ま、仕方ないわね。あなたの色恋沙汰の話なんて今まで聞いたことないものね」
「お母さん…、聞いても良い?」
「な~に?」
「好きってどうしたらわかるのかな?」
「……そうね、出来るならもっと早くに教えてあげられたら良かったわね」
「どうして?」
「大人になるほど、余計な知識や観念に惑わされて、純粋に『好き』って気持ちを素直に感じ取りにくくなってしまうのよ」
「?」
「本当はとても単純なことよ。それをね、難しく考えてしまうから分からなくなるの」
私は、難しく考えてしまっているのかな…


