せぴあなタメ息

一歩ごとに、

高揚感に包まれて、

自分が違う自分になっていくのを感じる。
 

マイクスタンドに触れ、

マイクに触れる。
 
なんともいえない喜びが体からあふれてきた。
 
今ここにいる偶然に、

感謝、だ。
 
 
吸い込んだ息を、

声にして吐き出した。

歌も歌詞も覚えていた。

そうと知らずに、

友之が歌うのを、

完全に覚えていたから。

声が演奏に乗っかる。
 
歌うと少し空気を孕む声が、

艶やかにホールに響く。