女の名前は斉藤理恵。年齢は四十九歳。職業は無職。親の財産で遊び暮らしている。
 大城春男はオートドアロック方式のマンションに入るのは、はじめてのことだった。キョロキョロとあたりかまわずみた。そんな挙動不審の男をみて、理恵はニヤついていた。
 部屋は三つで、一つずつが大きい。ベッドルームには、春男がみたこともない巨大なウオーターベッドが鎮座していた。
 
 二人は居間の応接セットに座った。春男は調度品の豪華なのに驚いた。春男の父親の店にはなかった物ばかりが並んでいた。「ものすごい物があるな。これ一つずつ、一体いくらするねんやろ。この女は誰かの売女かいな。売女でも相手は相当な極道やろな。」と恐々、勝手な空想をしていた。

 春男は予定が狂ったことを確信した。「これは、下手に手をだしたりしたら、とても指を落とすだけでは済まんぞ。片手を持って行かれることになるかも知れん。」と思い、理恵の様子をビクビクとして、みつめていた。

 理恵は上着を脱ぎ捨て、下着姿になった。そして、春男に近づいた。そっと春男の太股に手の平を置いた。理恵は遊びなれた女として、春男の目に写った。

 春男は、「あかんぞ。手をだしたらあかん。こんなええ話があるかい。手をだしたら、合図して極道の男がとびこんできよるのとちゃうか。そんな手筈になっとるはずや。世の中にこんなええ話はあれへんぞ。」と再び警戒し、胸騒ぎを感じた。

「あんた。なにをビビってるねん。さっさと、やることやらんかいな。」というと、理恵は春男の口を吸おうとした。春男は驚き、理恵の肩を向こうに押した。そのはずみで、理恵の体はソファに横倒しになった。「なんやねん。意気地なしやろ。」と理恵はいきまいた。そして、とぶようにして春男に抱きつくと、今度も口を吸ってきた。

 春男は舌を吸われた。理恵は春男の唾を平気でゴクンと二度も飲み込んだ。「この女、この女、おれをどうするつもりやねん。」と春男は、自身の舌も動かしはじめていた。