大城春男は母親に言葉のドスを突きつけられた。それで仕方なく家をでた。
 もう夕方だった。時計をみると、午後の四時だ。「まだバイトには時間があるぞ。」と算段した春男は、地面を蹴るようにして最寄りの地下鉄まで徒歩六分の道を急いだ。

 春男は日本人ではない。韓国人の両親の四男にうまれた。両親も日本でうまれた韓国人であり、両親とも日本の教育を受けた。
 春男の学歴は大阪市立西南中学校卒業である。
 
 父親は時計修理と販売の個人店を余所の借り店でしていたが、脳卒中で十年前に死亡している。                                    
 兄貴たちは府立高校をでている。兄弟で中卒は春男だけだ。姉妹もそれぞれ二人とも府立高校を卒業している。

 兄貴たちや姉貴たちは、それぞれ就職し、所帯を持ち、また嫁入りした。春男だけが半端な人生を送ってきた。

 中学卒業と同時に長男の電気工事の仕事を手伝うが、喧嘩してしまった。それで兄貴のところにも出入り禁止となった。

 やけになったのか、チンピラにだまされたのか、博徒の組の電話番をすることにした。電話番をするとき、親分からチップが与えられる。
 
 春男には飲酒にともなう女癖があった。ビールを小さじ一杯なめても、あそこがピインと立ってしまう。そうなれば自制心はきかなかった。

 春男は親分からもらったチップを握りしめて、組事務所から自転車で十分の悪所へ通っては、売女の尻の穴を指でグリグリにした。