JSB1000の決勝が始まる。

静まり返る俺の頭の中。



勝ちたい。



けど…どこかで。

光さんが勝って欲しい、なんて訳のわからない事を考えていたり。



自分の事に集中しないといけないのに。

光さんが気になる。



俺は視線をちらっと光さんに向ける。



光さんは相変わらず落ち着いてマシンのチェックをしている。



俺は一呼吸置いてタンクに手を当てた。



どうか。

このレースも充実したものになりますように。



一瞬、目を伏せて。

真っすぐ顔を上げた。



夏の終わりの。

少し淋しさを含んだ風が俺を吹き抜けた。