「祥太郎…凄いなあ」

祥太郎の走行が始まると光さんはレーシングスーツを脱いでモニターを見つめていた。

さっきからラップタイムが2分07秒300前後を常に刻んでいる。

それを楽しそうに見つめる光さん。



「変な話やけどな…」

光さんはあたしを見つめた。

「こんな暑いし苦しいし。
早く解放されたいって思うのに、ずっとこのまま走り続けたいって思うのもあるねん」

そしてもう一度、モニターを見つめる。

「これが終わったら、また祥太郎とはライバルになる。
その戦いもあと少しやし。
時々凄い寂しくなるねんな」

光さんは辛そうに微笑む。



あたしは俯いた。

顔を上げていると、本気で泣きそうになる。



「あ!!」

光さんが急に叫んだ。

祥太郎が2分06秒987を刻んだ。



チームが沸く。