ハクは毎日俺のところに来ていた。俺もハクが、自分のところに来るのを楽しみにしていた。
 今日も、俺が家から出て来ると、前の方から走ってくるハクが見えた。
「ハク、今日も来―」
 俺が言い終わらないうちに、ハクが俺に飛びついてきた。俺は危うく転びそうになった。
「ホントに」
 俺はそんなハクをしかたないなと思いながらも、何故か無性に愛しく感じた。
「ハク、何見てんだ?」
 ハクの視線の先を見ると、俺の持っているアイスを見つめていた。
「食べたいのか?」
 ハクの口の端が徐々に上がっていく。
「ホラ」
 俺がアイスをハクに渡すと、ハクはそれを嬉しそうに受け取って食べた。
 ハクはアイスを初めて食べたのか、嬉しそうに笑ってみたり、驚いたような顔をしてみたり、まるで百面相だ。
 その時、ふと気がついた。
「ハク……お前、小さくなってないか?」 ハクが、初めて会った時より少し小さくなっている気がしたのだ。
 ハクの顔が一瞬強ばったのを、俺は見逃さなかった。でもハクはすぐに笑顔に戻って、首を横に振った。
 それより、と言うようにハクは俺の服の端を引っ張って、森を指差した。
「あ、ああ。行こうか」
 でも俺の中にはまだ不安が残っていた。