あまりに嬉しそうにしているので、俺はその女性がなんだか少し可愛く思えた。
「名前は?」
 女性は答えない。というよりは、何か言おうとしたが、喋れないといった風だった。
 ―喋れないのか……。
「じゃあ、勝手に呼んでいい?」
 そう聞くと、女性はさっきよりも嬉しそうに、でも少し恥ずかしがりながら、小さく頷いた。
「ハク……かな」
 女性は言っている意味がわからないというように首を傾げた。
「君、肌も白いし、今着てる浴衣も真っ白だろ。だから」
 俺がそう言うと、女性は自分の浴衣を見て、そして今度は無邪気に笑った。
「駆!かける!」
 家の中から祖母が叫んだ。
「ヤバッ!じゃあ、またね」
 俺はそう言ってハクに軽く手を振ると、急いで家の中に戻った。