季節は、昼でも少し肌寒いくらい、秋へと近付いていた。そのせいかハクが来ないせいかはわからないが、なんだか少し気持ちが淋しい。物足りない……。
 毎日のように来ていたハクが、あの日、学校に姿を見せてから一度も来なくなった。
「駆!あんまり縁側にいると風邪引くわよ」
 奥の方から母さんが声をかける。
 あれから毎日こうして縁側でハクを待っている。でもハクは一度も姿を現さない。 俺はふと庭の桜の木に視線をやった。秋になり、小さくなった桜の木は、庭の隅にポツリと 佇んでいた。それはまるでハクのように感じられた。
 その時俺はふと気づいた。
 小さくなった今のハクでは、塀の外に来たってわからないのだ。
 俺は急いで外に出た。でも、やっぱりそこにハクはいなかった。