ある夏の暑い日、俺はいつも通り、辺りを畑に囲まれた田舎道を、歩いて帰ってきていた。
 俺の住むこの町は、中心地は商店やコンビニがあり、他の町ほどではないものの、多少は賑わっている。しかしそこから二十分も歩けば、昔ながらの瓦屋根の家が建ち並び、目の前には田畑、道路は砂利道で、ご近所同士が仲の良い、風情のある街並みが目に入る。
 そんな田舎道を、俺はなるべく木陰を歩いていた。それでも溶けてしまいそうなくらい暑く、俺は日差しを避けるようにして、少し俯き加減で歩いていた。
 家まであと数十メートルという所で、ふと顔をあげると、家の傍に、白い浴衣を着た女性が立っていた。
 女性というか、どちらかというと女の子のようなその人は、少し茶色みがかった短い髪にウェーブがかかっていて、肌の色は真夏だというのにすごく白い。背も小さめだ。
 俺は来客かと思い声をかけた。
「うちに何か御用ですか?」
 しかしその女性は何も言わずに、ただニッコリと微笑んで、帰って行ってしまった。
「なんだったんだろ」
 俺は小さく呟いて家の中に入った。