…好きだったから。


リレーのスタート目前、わたしはカメラを構える。

シャッターを切り続け、いよいよアンカー。会場内は更に盛り上がり、生徒の歓声が大きくなった。

フェンダー越しに映る彼は、宣言した通り小さくだけどピースをしていて、余裕すら見せた。

だからって不真面目ではなく、顔つきは真剣そのもの。

走っている間はいつだって真剣で、額にうっすら汗を浮かべる。

なのに、綺麗な走りに目を奪われるほど、とても軽やかにしっかりと地を蹴る。


[頑張ってっ…]

自分のクラスよりも、最下位の彼のクラスというより彼自身を応援してしまっていた。

シャッターを切る指の動きが止まってしまうくらい、その走りがしなやかだった。


パンッ、パンッ。

競技用ピストルの発した音がフィールド場に響き渡り、競技終了を知らせる。

ハッと我に返り息を飲み込んだ。