…好きだったから。


コンピュータの前、気になる会社の募集要項をメモに取る。


特にやりたいって思うような仕事、ないなあ。

…やりたいこと、か。


『はぁーっ、仕事決まらないっ!聡、聞いてる!?ハローワークの人もね、希望聞いときながら、その条件に合う会社はありませんからって。ねえっ、聞いてるのー!?ひどいんだよーっ』

『ちょ、明日当番で朝早いからさ、寝かせてよ』

そそくさとベッドに潜った聡の肩を揺さぶるわたしの腕を、欝陶しそうに跳ね退ける。


『ええ!?もう寝るの!?早過ぎるよー。話しくらい聞いてよ!』

『瞳の話しは一方的だから聞きたくない。おやすみ』

布団を頭の先まで被って、わたしの降りかかる声をシャットアウトした。


『…何よっ!!』

わたしは早くに就職が決まった聡に、参考として就活のコツや話しを聞きたかっただけ。

一方的。そう言われて、心に余裕なんてないことに気づく。


一足先に社会人になった聡に、なんだか置いて行かれたみたいで、焦ってばっかで余裕なんてなかった。