…好きだったから。


「もう、また裏返し…」

洗濯層の中に、きちんとひっくり返した洗濯物を突っ込みながら、わたしは独り言を吐く。


何回言っても、聡はシャツや靴下を脱いだ状態のまま脱衣カゴに入れる。

裏返しにされた洗濯物を、そのままわざとらしく干したことがあった。


『干す時に戻せばいいじゃん』

『脱いだ時に裏返せばいいじゃん』

膨れっ面をした聡に、わたしも負けずに頬っぺたを膨らませる。


『母さんと同じこと言うなよ』

『それは聡がだらしないからでしょ』

聡がむきになればわたしも歯向かう。


『最近小言ばっかだな』

『小言じゃないよっ!何それっ!?』

疲れる。そう呟いて重苦しいような溜め息を吐き出した聡。

それを見てわたしは更に苛立つ。


慣れない新社会人の聡。

就職が決まらないわたし。


2人の新生活が始まって1ヶ月。

わたしたちはそんな自身の、ストレスやイライラをぶつけ合うばかりだった。


思いやる心が大事なんだよね…。