…好きだったから。


店を出ると辺りがオレンジ色に染められていた。

沈み行く夕日は、青い空に薄い赤のグラデーションを描き足す。


[言った通り、ピースしたでしょ?]

フィールドの片隅でカメラを持つわたしの前に、再びやって来た彼はそう言って笑った。


無邪気な笑顔に、わたしはやっぱりぽかーんとして。


[…何で、窓からいつも見てるの…わかったの?]

やっと聞きたかったそれを聞くことができた。


[…いつも俺が益山さんのこと見てるから]

[…え…?どう…]

どういうこと?聞き返すつもりだったわたしの言葉に、彼は照れたような表情をして言葉を重ねる。


[最初は、何を見ているのか気になって。次は誰を見ているのか。そのカメラで誰を捉えているのか…気になって。気づいたら姿を探してた]


好きなんだ。


笑顔は消え去り、真剣な顔つきを見せた。

走っている時と全く同じ顔で、[好きなんだ]ゆっくりと口を動かした。