50男の恋

「明日、久しぶりに電車で行ってみようと思って、調べていたんだ。」

「なんで、わざわざ電車なの。飛行機のほうが早いじゃない。おかしな人ね。」

「学生の頃に汽車で実家に帰っていたから、なんだか懐かしくてな。同窓会だから、久しぶりに昔の様に帰りたくなったんだよ。」

「面倒臭い人ね。一緒に行かなくて良かったわ。1人で、ビールでも飲んで、感傷に浸ってください。
わたしはもう寝ますから。」

「あぁ、おやすみ。」

いつから、こうなったんだろう。少し前までは、仲の良い夫婦で通っていたのだ。

ここ数年、妻とは一緒に出かけていない。会話も必要なこと以外はほとんどしない。
それを寂しいとも思わなくなったのは、いつからだろう。

妻との会話が減るにつれ、どんどん妻の気持ちを思いやる機会も減っていった。それどころか、妻との接触さえ避ける様になっていった。