50男の恋

やっと書類の処理が終わり、会社を出ようとした時だった。

0908135XXXX

見覚えのない番号だった。
夜の11時に取引先から電話はないよな…

と思いながらも、仕事の口調で電話にでた。

「はい、坂口です。」

「おぅ、久しぶり、俺、成田。成田誠二。分かるか。」

なりた、成田、成田誠二!

思い出すまでに少し時間がかかった。その沈黙を感じとってか、相手が言った。

「北陽中学の成田だよ。2年の時、同じクラスだっただろ。」

「おぉ、成田か。久しぶりだな。元気にしてたか。」

「おぅ、元気げんき。頭の毛は元気がないけどな、はっはっは。」
「相変わらずだな、お前は。って、つまんねぇし。はっはっは。」

「俺さ、同窓会の幹事やってるんだよ。地元に帰って、実家の酒屋継いだから、何かとみんな家に来るもんだからよ。」

「そうか、幹事か。大変だな。
俺も一応行くつもりでハガキ出したんだけど。」

「そうそう。お前が来るって言うから、珍しいってみんなが騒いでるぞ。
ほんとに来るのかって、あんまりうるさいから、確認に電話したんだよ。
お前、野球部のエースだったから、けっこう騒がれてたもんな。」

俺は、絶句した。
そうだった。